153人が本棚に入れています
本棚に追加
もたれかかる男性を女性が受け止める。
「ぇ?」
男性の顔が女性の首に近づいた時、女性の顔が歪んだ。
なんと男性が首に噛み付いていたのだ。
「ッァ…」
血が首から滴り女性の顔色がみるみるうちに変わっていく。
そしてついに生気が感じられなくなった。
それにいち早く気付いたのは楠木だった。
楠木「ヤバいな…」
噛み付いていた男は口から多量の血が垂れている。
顔はまるで死人のようだ。
目の前の光景に皆が一瞬凍り付く。
周りにいた人達は我に返ると悲鳴を上げ、一斉に逃げ出し、辺りはまた先程のように酷い騒ぎになった。
口から血を垂らした男は逃げ惑う人達を追いかけ捕まえ体に噛み付く…
その姿は正気とは思えない…
これも、例の感染症の影響か……?
しかし、俺の頭はそんな事を考えている暇はなかった…
噛まれた人は倒れ痙攣を起こす…
そして起き上がり人に襲いかかる…
そんな事が目の前で繰り返されているのだから冷静に事態を把握する事ができるわけながない。
俺は妹の手を取り校舎に向かうのが精一杯だった。
騒ぎで逃げ惑う人の中を楠木と小銃を持った男達は急いで人混みをかき分けヘリに向かっているのが見えた…
校舎に入ると下駄箱があり廊下を右に行くと教室、左に行くと階段がある。
将文「母さぁーーん!」
俺は叫んだ。
母「将文!こっちよ!」
上の階から聞こえてくる。俺と妹は階段のある左の廊下に向かい上の階へと階段を上った。
階段を昇って辺りを見渡す。
母さんは2-Aの教室の前にいた。
俺はその教室に少し懐かしさを感じていた。
なぜなら、俺はこの教室で一年間を過ごしていたからだ。
母さんの姿を見つけた妹は走り寄った。
俺もその後ろをついていく。
将文「いったい何が起こってるんだろ?外は凄い騒ぎだよ!」
母「よくわからないけど中にいる人に聞けばわかるかも。」
将文「中に誰かいるの?」
母「先に検査を終えてた人がいるみたいよ。」
横スライド式の扉は閉まっていたので中の様子は分からない。
だが、やけに静かだった。そして母さんが扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!