夢の底

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彼女が夢に現れなくなって一年 俺はイライラの限界を超えていた 夢は見る でも彼女がいない 彼女がいての夢なのに 彼女がいないのだ 楽しくなんて ない 神様 彼女に会わせて下さい ずっと好きだったんだ 狂いそうなんだ 会いたいんだ すっと目を閉じる 部屋の天井は消え 闇が瞼に広がった 闇に飲み込まれ 夢が顔を出す 広がる浮遊感に 徐々に明かりが灯り始めた 探すように目を開くと 何もない砂場に出た そこに見えたのは 薄いピンクのワンピースに 薄いピンクの長髪に コバルトブルーの輝く眼 嬉しそうにワンピースを翻すその姿に胸を打たれ俺は駆け出した。ドキドキが大きくなってひどくうるさく聞こえる。 やっと 嗚呼、やっと 彼女がいた ブルーの眼ははにかむように細められ 何かを呟くような口は小さなメロディを奏でている でもそれは 人の声じゃない          
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