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僕はただ、それを見ていた。   ぽこんっと、腕に何かが当たった。 「わりぃっ当たったぁー?」 へらへらと廊下から僕に笑いかけてくるのは陽気なやつらのひとり。 当たったのは、僕の消しゴムだった。 どうしたら廊下でのキャッチボールで、教室にいる僕に当てられるんだ。 まぁ、誰かがプロもびっくりの変化球でも投げたのだろう。   拾ったはいいが、これは僕の消しゴムだ。なのにあいつらに返すのか…。 今ここで僕がポケットに入れようものなら、陽気なやつらのブーイングを全身に浴びかねない。   仕方がないので貸してやることにする。 廊下にいるやつらのひとりに、消しゴムを手渡す。 わざとらしい声で 「ありがとーマジありがとーっ」 と言ってきた。   周りのやつらはにやにやしている。 この中に変化球を操るやつがいるのかと思いながら教室へ戻ろうとした。 「ねーねーなんで座席表見てたのー?」 なんともだるそうな声で呼び止められる。 僕のことを見てたのか。 キャッチボールはどうした。 「いや…別に」 振り向いて答えても、やっぱりやつらはにやにやしている。 「あれじゃね?ゆーこちゃん?」
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