西上総神通力研究所

雨呼ぶ子

　　　　　　　４
湯呑みに入ったブラックコーヒーを啜りながら、鹿野はクロたちの調査報告書を読んでいた。ここで彼のオッケーが出なければ、再調査ということになる。
｢はい。…まぁ、いいでしょう｣
書類をポンと叩いて、狐のような顔で微笑んだ。クロは茜と顔を合わせ、安堵した。
水上悠はあの日以来、雨雲を呼ぶ以上の能力は発動させることはなかった。生命の危機に直面しないかぎり能力は休眠状態となり、精神不安定になった場合にだけ一時的に雨が降る程度で収まっている。それすら、当人にはコントロールできないようだけど。