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「あいつ、変な夢も見なくなったらしいな」
プールの水で龍神を喚んで以降、不思議な濃霧の夢は見なくなったそうだ。
「覚醒を告げる予兆でしょう。言い伝えでは、前世でもある先代の能力者が次代の能力者の覚醒を予言し、それを促すようです」
古い巻き物を指でたどりながら鹿野が答えた。
「ただ、代が進むにつれて、能力者に明確な予兆がなくなり、覚醒したとしても能力自体は弱まっているようですけどね」
細い目をさらに細めて熱いコーヒーに口をつけた。「滅びゆく血統ですよ」と、一言だけぽつりと言って、鹿野は巻き物を丸めて書棚にしまった。
かつて水上一族は「水神」と呼ばれ、天候を意のままに操り、膨大な水を自在に喚びだす強力な能力をもっていた。それが末裔にあたる悠は雨男程度の力すら制御できない。一族も、能力の存在すら忘れてしまっている。
淘汰されていく力…
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