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高台の公園のベンチで、体の芯まで凍えてしまいそうな冷たい雨に打たれながら、身動きひとつしない少年がひとり。
何を見るでもなく、ただ虚ろに雨に霞む町並みを眺めていた。
「風邪ひきますよ」
狐のように目を細めて微笑む白髪痩身の青年が、すっと傘を差しかけた。ゆっくり顔を上げた少年の瞳に妖しい青年の笑顔が映る。
「独りですか?」
沈黙で応える少年。
「僕と一緒に来ませんか?」
少年はわずかに逡巡した後、表情を変えることなく無言でこくりと頷いた。
夕暮れ、薄暗闇に包まれはじめた公園から、音もなく彼らは姿を消した。
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