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朝陽が痛い。普段からぼんやりしている目が重たくて、さらに半目になっている。
こんなに早起きしたのは何日ぶりだろう…
「なぁ、茜。やっぱ俺が中学生ってムリないか?」
くわえ煙草のクロは頭をぐしゃぐしゃ掻いて呟いた。その独り言のような言葉に、肩に引っかけたスポーツバッグがもぞもぞ動く。
「大丈夫よ、アンタの見た目は十分中学生だから」
艶のある女の声が返ってきた。
「てめぇ!俺はなぁ、これでも立派な…」
とっさに反論しようとして言葉につまった。
俺は、何者なんだっけ…
自分には過去の記憶が一切ない。思うように言い返せない腹いせに力一杯バッグを振り回した。バッグから悲鳴があがる。
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