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あの雨の日、風変わりな男に拾われ、言われるままに彼が趣味でやっているという研究所に連れていかれた。
男は鹿野シロと名乗り、「いずれ、記憶は戻りますよ」と自分自身のことを何ひとつ思い出せないクロを研究所に住み込み助手として雇った。つい先日、助手に逃げられてしまって調査が進まず困っていると鹿野は笑った。
「今回の調査対象はどんなヤツだ?」
吸い殻を道に投げて、面倒くさそうにバッグの中身に訊いた。
「水上悠、男子、14歳。<雨男>の能力はまだ覚醒してないみたいね」
バッグは楽しげに歌うように揺れながら答えた。
「おまえ、対象者が男だとやる気満々だよな」
「あら、気のせいよ~♪」
クロの嫌味に嬉しそうに返事をする。
この色惚けババァが!
彼女に聞こえてしまうとどんな仕返しされるか恐ろして胸の中だけで毒づいて、予鈴の鳴り響く校庭をゆうゆうと歩いていった。
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