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「またあの夢だ…」
ベッドに寝転がったまま、悠は深いため息をついた。
足元も見えないほど深い霧の中から自分を呼ぶ声が聞こえてきて、導かれるままに黙々と歩き続ける夢…何度か見るうちに、少しずつ声の主に近づいていることに気づいた。不思議と恐怖感はなく、かえって懐かしいようなやすらぎを感じる。
いったい、そこには何が待っているのか。
「悠!早く起きなさい、お友達来てるわよ」
「え!?」
友達って、僕にはこんな朝早く家にまで来るような仲のいい友達なんていないけど…
転がるように階段を下りて、そっと玄関を覗いた。
「よぉ!水上くん」
今起きたばかりの悠よりも、数倍眠そうな顔をした少年が手をふっている。
「鹿野…くん?」
昨日、自分のクラスに転校してきた鹿野クロ。登校初日から堂々と遅刻してきた上に、授業のほとんどを居眠りで通した変り者。そんなヤツがなぜ家に?
クロにせかされるまま、朝食もそこそこに家を出た。
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