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「よく朝から飯食えるよなぁ、やっぱ若者はすげぇ」
そう言って、クロは制服のポケットから煙草を取り出して、慣れた手つきで火をつけた。
「か、鹿野くん!煙草…」
「はは、堅いこと言うなよ~」
ふぅ、っと煙を悠の顔に吹きかけて肩を叩いてきた。
なんだよ、こいつ。
面倒そうなヤツにからまれて泣きたくなる気分で咳きこんでいると、クロのバッグがひとりでに開き、何かが飛び出し悠の肩に乗った。
「もう!いじわるしちゃダメよ、クロ!ホント大人げないわねぇ」
突然聞こえた耳元の女の声に驚いて肩を見ると、赤い瞳を輝かせた真っ白い生き物と目が合った。
「ぎゃぁ!!」
飛び退いた拍子に足がもつれ、思いっきりしりもちをついた。生き物は悠からひらりと跳んでクロの肩に移った。
「こいつは茜、ただの貂だ。化物じゃねぇよ」
悠のおどおどした動揺ぶりをゲラゲラ笑うクロに、「化物」と言う言葉に腹を立てたらしい人語を話す貂は、彼の首に巻き付いて締め上げて反撃している。とても現実とは思えない情景…
僕はまだ寝ぼけてるのか?
眩しい朝焼けに目をこすりながら、悠はクロたちに引きずられるように学校へと向かった。
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