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あいつを急いで覚醒させるには何をしたらいいんだ?
頭をバリバリ掻いて寝返りをうったクロの耳に、小さな悲鳴と数人の足音が聞こえた。
「茜、こっち!」
素早く屋上へ出る扉の裏にまわり、駆け上がってくる集団から身を隠した。バタバタと勢い良く飛び出してきた数人の男子は、ひとりの少年を追っていた。
「あれ?水上だ」
逃げているのは悠だった。必死に身をかわしながら、集団に捕まらないように走りまわる。どうやら彼はイジメにあっているようだった。
「ほら、助けなさいよ、クロ!」
茜にせっつかれたのに、クロはまったく動こうとしない。
「クロ!」
キーキー騒ぐ茜に、うるさそうに目を閉じて、くわえた煙草に火をつけた。
「あぁいうのはな、自力で切り抜けなきゃいけねぇんだよ。誰かが一時的にかばっても、またすぐ元の状況に戻っちまう。いや、逆にもっとひどくなることも…」
そう言って、クロは黙り込んでしまった。なくした記憶の中に似たような経験でもあるのだろうか。
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