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「なかなかでしたね。まあ、狭かったと言えば狭かったんですが。どうせならCHに乗りたかったですよ」
28歳の俺より若いのに、整備員の頭には白いのがかなり混ざっている。
「そりゃあそうだ。しかし、五月蠅く無かったか?確か、あのヘリはエンジンが3つ位あったろう」
「五月蠅いですね。ダウンウォッシュが他のヘリより凄かったですし。
まあ、別にいいんですけどね。…機関銃でしたよね?」
「ああ」
整備員が機関銃の手入れを始めたので、俺は格納庫から出た。
「隊長。司令が呼んでますよ」
旗長が俺を見つけて、追いかけてきた。
「挨拶忘れてた。よし、お前も来い」
追いついた旗長の背中を叩いて、そのまま引っ張っていった。
“コンコン”
司令室のドアをノックする。
「328飛行隊の島橋一尉と、旗長二尉であります!遅ればせながらもご挨拶に参りました」
威勢よく声を張り上げると、中からくぐもった声が返ってきた。
“どうぞ”
ドアを開けると司令が作業机で業務を行っていた。
「そこに掛けていたまえ。すぐに終わらせる。何しろ、今日は来ないだろうと考えていたからな」
「すみません。飯を食べていなかったんで…。カレーはなかなか美味でした」
席に腰掛けて手を擦り合わせて先程のカレーを思い出す。
「カレーなんかどうでもいいじゃないですか」
旗長が横から小声で言った。
「はい、お待たせしました。さてと、まあとりあえず。
海上自衛隊小月教育航空群の木村 隆海将補です。小月基地へようこそ。328飛行隊」
「恐縮です。改めて、私が隊長の島橋一尉。こちらが旗長二尉であります」
「噂は聞いておるよ。空自一の戦闘機隊とか」
「空自一は行き過ぎてますよ。301飛行隊も手強そうですし」
「そうかね。いや、話しは変わるんじゃが、君達はヘリ空母を知っとるかね?」
ヘリ空母と言えば、自衛隊のみならず、巷でも騒がれた艦だ。
「知ってますよ。確か…『ひゅうが』クラスの」
「そうだ。では、『おおすみ』型は知っとるか?」
これは海外派遣で有名になった艦だ。
「海自最大の輸送艦ですね」
「うむ。これらの艦は、航空機同時運用能力がある」
要は、一度に複数機発艦出来ると言いたいのだろう。
「はい…。まさか、我々はあれらに積まれるんですか?」
「いや、ひゅうが型もおおすみ型も、ヘリ以外の戦闘機運用能力は無い」
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