1部

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 まあ、それでも、先述の二つが学園祭で出された時には、校内が抱腹絶倒に陥ったのですから、さすがと言わざるをえません。タイトルを先に決めてストーリーは後付け、という奇抜なスタイルで書く部長の喜劇は、まさしく非凡。この人、1年生の入部時から脚本演出を担ってきた鬼才なんだそうです。  オリジナリティに目が眩んだつまらない作品より、遥かに素晴らしいことじゃありませんか。わたしは部長を支持します。 「おおっ、さすが私のコーギーちゃん! うう、部長冥利に尽きるよ」  泣き真似を演じて見せたあと、ケロっとした笑顔に戻り部長は、シーモさんの隣の椅子に腰を下ろしました。 「んで? シーモは何か文句があるのかんなぁ?」  パンを食べ終えたシーモさんは眼鏡のフレームを押し上げます。インテリが似合ってて、それはそれで格好良いとも思います。まったく好みじゃありませんけど。   「別に、文句は無い。脚本はお前に任す。ただ、前回の『ロミオはジュリエット』より、ずっとストーリーの予測ができない。いったいどんな話だ?」 「えへ」と部長スマイル。 「タイトル思いついたの今朝なのだ。ストーリーは今晩お風呂で考えるのだー」  語尾に音符マークが安易に補完できるほどキュートな声で部長は仰ります。  良いですね。わたしも部長のようなスタイルのかたとは是非、湯浴みを同伴したいものです。実の所AAカップであるわたしは、垂涎しながら部長を舐め回すことでしょう。ええ、もう。なんだかムカムカしてきました。 「あはははー、大丈夫だって。コーギーみたく、ちんまりした子が最近は特に人気沸騰してるらしいから」  それは主に二次元の界隈に癒着した話だと思います。やたらとモッチャリしたリュックを背負ってるバンダナ頭の男性陣に求愛されても、ネガティブな返答に1秒も要しません。  対して、わたしが好きな玉木宏は、おっぱい星人の匂いがします。顔的に。  男なんてみんな乳と尻の憧憬に溺れながらアスキーアートを書き連らぬる蛮人です。  落ち着け、わたし。  女子の会話が心の底から退屈だったのか、シーモさんは無聊に欠伸を飲み、パイプ椅子の背もたれへ仰け反ると眼鏡を外して二の腕で目元を覆い隠してしまいました。眠そうです。どうせ夜遅くまでネットサーフィンをやっていたんでしょう。彼からもインドアな空気が漂ってきてなりません。口には出さないでおきます。
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