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「うぃっ、お疲れぃ!」  パシリ先輩です。お疲れ様です。 「おお、犬鷹コンビ。早いじゃん。じゃあファルコンの方、ちょっとコーラ買ってきてくれ」  ぶしつけですね。  しかし、わたしたち二年生も、もはや慣れてることです。 「あ、はい。行ってきますね。えと、ペプシ? ノンカロリー? レモン?」  うちのガッコって、そんなに品揃え豊富でしたっけ? 「普通の頼む。一番普通の。余計な特殊装備ゼロのやつ」 「ゼロですね、わかりましたぁ」  それを最後の言葉にして機嫌良くタカッチは部室を退場します。  パシリ先輩、わたし賭けても良いですが彼女はコーラ・ゼロを買ってきますよ? 「ああ、俺もそう思う。まあ、ファルコンだからしょうがない」  そしてタカッチと入れ違いに、間もなく扉が音を上げます。  やってきた彼の、覇気の無い声が聞こえてきました。 「あー……、お疲れ様でぇす」  パシリ先輩は早速、 「おらぁ、ゴン! コーラ買ってこいや! ノーマルコーラだ。もしも、お前、ゼロとか買ってきやがったらアントニオ・ボドリコ・ノゲイラのメニュー端から体に教えてやる!」  ボドなんとかゲラて、誰です、それ。  ずいぶんとタカッチとの扱いに差があるように思われる、可愛そうなゴン(金子→カネゴン→ゴン)は、肉を食えと言いたくなるほど活力に乏しい顔付きで先輩を見ます。   「はあ、……わかりました」  荷物も置かぬまま、行ってしまいました。  来る後輩来る後輩がパシリ先輩の毒牙にかかります。忙しないたらないです。それよりもこの人、コーラを二本飲む気でしょうか?  パシリのうち、当たり前ですが先に帰ってきたのはタカッチの方で、しかも、その手に、なんと普通のコーラが握られているではありませんか。  ニコニコしているタカッチはアニメの後輩キャラっぽい声で言います。 「はい先輩。特殊装備ゼロの、正真正銘、普通のコーラでぇす」  驚愕の顔で受け取るパシリ先輩、 「お、おま……、な、」  おそらく「なんで?」と言いたいのでしょう。  確かに、部内のみんなが熟知するタカッチの“性格”ならば、先刻のやりとりでコーラ・ゼロを買ってくるのは自明の理のはず。  驚きが隠せません。  依然としてニコニコを継続させている彼女は、 「パシリ先輩、金子くんにもコーラを買いに行かせたんですねぇ。そんなにコーラが好きなんですかぁ?」 「アーッ!」
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