功刀 清良…11月9日

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 啓が、大変おかしい。2週間前からだろうか。  味噌汁に醤油かけようとしたり、緑茶に砂糖入れようとしたり、元々天然だったが通常以上にベタなボケをしてみたり。  窓を見ては、ため息。  携帯を見ては、泣き出しそうな表情で。 「うざいわ」  あまりのうざったさに一言。  今は、次のコンクールの練習中。  ここは、ピアノもあり、防音効果のある大学の練習室内。ここの学生なら、予約すれば自由に使用できる。他にいくつも練習室があり、ここはその一つだ。  今は冬だが、春はここから桜が見え、密かに気に入っている。外は綺麗な青空が広がっていた。  しかし、こうも情感たっぷりに辛気臭い演奏ばかりしていたら、気が滅入る。  さすがに我慢も限界だ。自分が鬱になりそうだ。 「なにが?」  幽霊のように覇気のない表情。虚ろな瞳。  2週間前とは全く別人だ。 「何がて、お前以外ここにはおらへんやろ。どないしたん。言うてみ」  柄じゃない、と思いつつ、聞いてみた。 「無理」  一言で返された。 「即答かい。せめてもう少し考えてから返事しいや。それとも、おれには話せへんか」  啓は困った表情をしていた。 「ごめん」  謝るんなら、説明ぐらいしろ。 「もう、ええ」  苛立ってきたおれは、練習室を出ていった。乱暴に扉を閉める。  行き先は、もちろん…
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