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平凡な毎日。
いつも一緒の幼馴染みの様子がちょっとおかしいのが気にかかるものの、実技の個人レッスンも終わり帰ろうかと練習室のドアを開けると、茶髪にピアスの一見軽そうな幼馴染みその2が不機嫌な顔で立っていた。
「せーちゃん?」
不機嫌というか拗ねたような表情をしている。子供の頃から見慣れた表情。
これはけーちゃんと何かあったな。長年の付き合いは伊達じゃない。私にはすぐに解った。どうしたの?と優しく話しかけると、せーちゃんはボソボソと喋り始めた。
「アイツ、最近、様子がおかしかったやんか。聞いたら、無理って言われた。でも、お前にやったら話せるやろから聞いてくれ」
なんてお人好しな…無理とか言われて拗ねて出てきたのに、やっぱりけーちゃんが心配で此処に来たのね。優しい幼馴染みに私はにっこり笑うと、
「ちょっと、かがんで~」
と言った。
不思議そうな表情をしたものの、彼は素直に屈んでくれた。というか、私の申し出を彼が断ることは殆ど無いけど。
手が届く範囲になったところで、頭を撫でる。
「やさしいね~、せーちゃんは~」
サラサラの髪が心地いい。せーちゃんは一瞬硬直していたが、なんかよくわからない雄叫びを発しつつ、私とチェロを担いで疾走した。
本当にかわいくて、たまらないなぁ、私の幼馴染みは、と思った。
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