イチについて

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 同じ学校の同級生でありながら、彼が俺たちにアニキと呼ばれているのには、理由があります。  小学生の頃、うちの近所にカミカミ犬とか呼ばれてる、スゲー怖い土佐犬がいたんすよ。かなりでかいわ、顔怖いわで、みんな怖がっていたっす。  その犬が、皆で公園で遊んでいたところ、乱入してきまして。しかも当時まだ小学生ですから、小さな子達もいまして。  ソレをイチ君が倒したの!?いやーん、カッコイイ!  そうっす!逃げ遅れた子達をかばい、血まみれになりながら戦う姿は…  まさに、男の中の漢。俺らの理想の漢だったわけです。以来、尊敬の念を籠めて、アニキと。  いっつも呼ばなくていいって言われてるわよね?  姐さん、ナイスツッコミです。よく女の子に間違われるぐらい華奢なのに、すごい腕力ですよね。  どれだけ鍛えているんだろう…今度聞いてみようか、紅一。  女の子に間違われたくないかららしいぜ、蒼二。こないだ『男らしい体が欲しい』とか言ってたし、マッチョを目指しているみたいっす。プロテインとか飲んでたし。でも、体質的に筋肉つきづらいらしいっすよ。あれだけ筋力があれば要らない気もするけど。  まどか、そんなのイヤ!マッチョなんて可愛くないわ!イチ君、可愛いままでいて!! 『…何をしているのですか?コウ、ソウ、神津さん?』  イチの笑顔が怖いので、全員振り向くこともせず、全力で逃げてしまいました。
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