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僕の家は音楽一家で、父がバイオリニスト。母はピアニスト。祖父はバイオリン工房の職人です。
最初は、バイオリンを父から習っていたのですが、あまり向いていなくて…。今はもう、弾くことはほとんどありません。でも、祖父が『お前はいい耳を持っているから、職人になれ』と言ってくれて、今ではバイオリンの職人を目指しています。
そんななかで、たまたま父が審査員を頼まれたから、と一緒に行ったコンクールで、僕は最高の出会いをしました。
そこにいたのは、まだ中学生のあの人
僕は今まで数多くのプロの演奏を聴いてきたけれど、あんなにも心を、いや魂を揺さぶられる音を聴いたことはなかったのです。其処には確かに、言葉に出来ない何かがありました。
どこまでも、僕の中に響く、美しく澄んだ響き。真っ直ぐで、優しい音。それはどこまでも純粋で…
気づけば僕は涙を流していました。それすら気づけないほど、僕を激しく揺らした音。
僕はこの日、自分の理想の音を見つけたのです。
それから、僕はその人のファンになりました。
その人の名前は、
『加賀見 啓』
日本人らしい黒髪。すらっとした均整のとれた体。舞台の上で、とても凛々しかったです。
親にも協力してもらい、加賀見さんの出るコンクールやボランティアの演奏会を調べ、全て聴きにいきました。
追っかけも5年目となったある日。
大事件が発生しました。
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