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訓練中でも、未開拓の古の闇に足を踏み入れることがなかったせいか、今現在自分がバルコニア湿地帯の古の闇とされる崖から、どれ程の地点まで落ちたのかは分からない。
暫し周りの景色を観察した後、俺はまた重く抑え難い瞼を閉じた。
再び、取り戻した意識が遠のいてゆく……
「おい、生きてんのか?」
自分に向けられた声に思わず目を開いた。
こんな場所に人間が踏みいるはずもない。
重い瞼を押し上げて見た先にいたのは……
子供だった。
夏の青空のような髪に、健康的な澄んだ肌、そして純真な赤紫の瞳……
ファーをあしらった革製の上着に身を包み、よく見れば後ろにも仲間だろうか……何人かの子供が立っていた。
この状況には、果てしなく不似合いな光景が目の前にあった。
「よし、生きてるな?」
ニッと笑った顔は無垢な少年そのままで、何が何なのか、全く想像がつかない。
とりあえず体を起こそうと力を入れた。
――ズキッ――
鈍い痛みが脳天まで駆け上る。
「……いっ」
「あー無理すんな、運んでやるから!」
そう言われ、俺は言うことの聞かない体を彼らに担がれ、どこかにつれていかれた。
おそらく、敵ではないだろう……敵なら今この場で自分自身を片付けなければならない、それがファルコの掟。
しかし、今回はその心配もなさそうだ。
色々聞きたいことはあるが、体が動かなければ聞いたところで何もできない。
俺は彼らに運ばれ、己の体の回復を待つしかなかった……
今出来ることは、この状況の情報を集めること。
揺られながら俺は口を開いた。
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