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「知らな……いや待てよ? なんか俺こういう本で読んだような話は好きだぞ? もしかしてアレだろ、つまりクラヴァンスは俺の住む世界とは違う空間からきたとかいうオチだろ!?」
「あまりいい展開じゃないが、その線が濃厚のようだな……」
俺は途方に暮れ、次の判断さえ手探りな状態なのに、当のリディアは目をキラキラさせながら俺を見つめてくる。
本当に意味が分からない……
「じゃあ、俺達の居る世界ってやつを初めから話してくな? クラヴァンスは頭が良さそうだから、ちゃんと理解してくれよ?」
「あぁ」
「俺達は、10年前まではアンタと同じ、年相応の姿形をしていた。ところがある日を境に、色々な事が変わっていったワケよ……まず変わったのが、天候……穏やかな南の町では震災、台風と被害が続き、俺達が居るこの町も津波に襲われたんだ。国民が不安がる中、突然目の前が見えなくなる程の眩い白い光がこの世を包み、世界中の大人が子供に、子供が大人に姿を変えた……そして、大人にも子供にもふるい分けられなかった者は、無惨に朽ち果てた……俺達が見たのは地獄だよ」
リディアの顔が見る見るうちに心苦しげになる。
「人間が目の前で灰になっていって自分の体は子供だった頃に戻ってく、誰が何のためにしたのか、もしくは天が人を見放したのかも、まだ解っちゃいない」
「……」
「意味が分からないって顔してる。俺だってよく分からないんだ……でもな、普通人は老いて朽ちて死ぬはずなのに、俺達は年々幼くなり、もうこれ以上年齢を遡れなくなると……」
「蒸発……か」
「そ、だからどんどん人口は減り続け、今では10年前の約半分さ」
俺の想像を絶する出来事がこの世界では起きていた。
もちろん今全て信じろと言われても、自分の目で確かめないと何ともいえない。
それに、俺がなんでここにいるのかも、まだ何も分かっちゃいないんだ。
いずれにせよ……
どうすればいいのか考えねば。
考え込む俺を横目に、リディアは淡々と目の前で起きた無惨な話を続けた……
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