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「それでも10年も月日が経てばそれなりに解ってくることもある……俺達は姿が変わっただけで、他にはこれといって何も起こらなかった。でも、ある地域ではそれだけじゃなかった……力が目覚めたんだ」
「力?」
「俺達はそれをあの白い光から取って『光力(こうりょく)』と呼んでいるんだ」
光が与えた善とも悪とも取れる力……
本来俺達人間が持つべきではない力……
確実になにか歯車が狂い始めている。
「それで?」
「まずこの世界は大きく分けて四つの国が各地域を支配している……西にある密林を支配する国アルカド。 東の平野を支配する国ナターシャ。 南の砂漠を支配する国チュリエ。 そして今俺達の居る北の極寒を支配する国セイオス…… その中でチュリエの最南端、海を渡った孤島にだけ、その力を持つ者が現れた」
「ではこの町には力を持つものは居ないんだな?」
「いやいる、この10年の間に移り住んだ者だ」
「なぜ見分けがつく?」
「俺達は生まれた時にその出身国の国印を押されるんだ、ほら俺にもちゃんと着いてるんだぜ?」
そういってリディアは左の袖をまくり俺に向かってその印を見せた。
焼き印……
リディアの腕には確かに皮膚を焦がして付けた痕がついていた。
「クローバー……痛くはないのか?」
「さぁね? 俺達は生まれて暫くしてこの印を押されるから、正直自分が小さすぎて覚えてないんだよなぁ」
「つまり、誰でも必ず体のどこかにはその国印が着いてるってわけか」
「そ、クラヴァンスみたいに異世界から来ない限りはね? 俺達はそうやって身元を管理されてんだ」
俺が居た世界とは全く違う環境やしきたり…まだ覚える事は沢山ある。
しかしリディアの話を聞いていく内に、何となくだがこの世界の事を理解してきた。
焦る必要はない、どうせ俺の居た世界に戻れないなら、ゆっくり話を聞きながら考えることも出来る。
なんたってこの世界でこれから生きていかなきゃならないんだ、情報があるに越したことはない。
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