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一方、リディアは隣の部屋で食事を取っていた。リビングだと思われるその部屋には、護身用の剣や銃などの武具が壁に掛けてあり、クラヴァンスの休んでいる部屋とは物々しさが違った。クラヴァンスを運ぶときにいた者は皆帰ってしまったようで、今この部屋にはリディアしかいない……
「クラヴァンス……どこから来たんだろう?」
アイツは俺達の居るセイオスの遺跡に倒れていた……
遺跡は広大な為、迷わない自信のある者でない限り入ることはない場所。
その一番奥、精霊の宿ると言われる石碑の前に倒れていたクラヴァンス。
体も大人のまま、肌に国印も見あたらない。
アイツは確かにこの世界の者ではない。
ならなぜここに来た?
ただ迷い込んだだけか、何かを担って飛ばされているのか……
何にせよ、アイツといれば、他の世界の事も解るし退屈はしないだろう。
「面白い事になりそうじゃん」
スプーンを口にくわえたまま、クラヴァンスの部屋の方を見た。
だが、何かを思い返したように切なげな表情になり、頬杖を着いて考えこむ。
「でも、俺にはやらなきゃいけない事がまだ沢山ある……それなのにクラヴァンスに賭けて……もし俺の期待する結果が得られなかったら、取り返しは着くのか? 俺だって年々体が縮んでる……自分の意志で動くことを考えればそう長い時間は残されちゃいない。あー! もうわっかんねー!」
混乱の世に生まれて、彼もその運命にあらがおうと必死にもがいていた。
「やめやめ! 考えるだけ無駄! 俺は俺なりに思ったように動けばいい」
俺は元々難しいことを考え込めるようなタイプじゃないんだ。
何にせよ、クラヴァンスが回復しないと何も出来ない、まだ当分は様子を見ることは出来るさ、大丈夫……
焦るな……俺。
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