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『…らないよ』
えっ?
しばらく布団にうずくまってから、
君が呟いた。
『私、お金なんていらないよ』
一瞬、
何の話しか分からなかった。
『お金は、
環境を変えちゃうから』
1時間ぐらい前にした、
年末に誰でもするあの話しだった。
『怖いよ…』
何も言わずに、
笑って僕の途方もない『使い道』を聞いてくれてた。
『宝くじ、当たって欲しくないよ』
小さな声で、
ゆっくりと、
君が初めて僕に、
そう、語ったんだ。
あの時、
君は遠くなんか見ず、
目の前にいる僕だけを、
見ていたかったんだね。
なに泣いてんだよ。
急な展開にびっくりしながら、
慌てて君の涙を拭いたよ。
言いたくても、
我慢してたんだね。
飾らないその純粋さ。
君の気持ちが全身に伝わって来る。
僕はそっと身体を引き寄せた。
シャンプーの香りが、
やたらと優しかった。
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