引越し

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 曾祖母が亡くなって、一カ月が経とうしていた。  もうすぐ、桜の花も満開になり本格的に春の訪れを感じる季節になってきた。  今日から新しい生活が始まる。  あたしは、両親の仕事の都合があって、祖父母が住んでいたこの家に引っ越すことになった。 「綾子ぉ、ちょっと手伝ってくれない?」 「なーに、お母さん?」  元々は、曾祖母の物だったこの家はけっこう大きい。家というよりも屋敷に近い。  なんでも、昔は中々の資産家だったらしくて屋敷その物は古いが、庭園もある広い土地に、蔵に眠っている数々の家財見れば十分に過去の栄光を垣間見ることができた。 「それにしても、相変わらずりっぱなお屋敷だなぁ…。なんかちょっとしたお嬢様にでもなったみたい。」  あたしが、この家に来るのはこれで多分三度目になると思う。  一度目はあたしがまだ小さかった時の頃だ。 この時、あたしは初めて曾祖母に会った。  いや、  会ったというよりも見ただけだが。  窓辺に腰掛けて外を眺めていた曾祖母の姿は年老いているにも関わらず、幼き日あたしの目にはとても美しく、  そして  とても儚く見えたのだった。
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