~ 壱 ~

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  地面の温度を感じられなくなる程に、俺は延々と道を歩み続けていた。 素足で歩いている所為なのか、はたまた疲れの所為なのかは解らなかった。 時には生えている草に足首を切られながら、時には転がっている石に躓きながら。 傷だらけになりながらも、それでも俺は、道を歩み続けていた。 孤児になったという自覚はあった。父と兄は戦で、母は飢えて死んだ。 俺が母の食糧まで食っていたからだ。いや、無理やり母に食わせられていた。 お前は生きろ、お前は死ぬな、きっといつか幸せになれ。 毎日暗示のように囁かれ、死ぬ間際までそう言い続けた母の姿を、俺はきっと、忘れまい。
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