~ 壱 ~

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  俺は立ち上がるため地面に手をついた。夜風にさらされていた草が、ひんやりと手に心地良かった。 隣で俺が動いた所為か、男がもぞりと動く。顔を覗き込むと、男はゆうるりと目を開いた。 「ああ、目が覚めたかい」 自分が目覚めたところだと言うのに、その男はそう言うと、微かに笑った。 月に照らされた顔はやはり村の男共とは違い、端正な顔立ちをしていた。体と同じく、貧弱そうではあるものの。 胸に脇差しを抱えたまま、俺は男に尋ねた。 「どうして、こんなところで眠っていたのですか」
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