宝石の主

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 少年はこの館の一番末の子供だった。好奇心旺盛な青玉の瞳をキラキラと輝かせ庭を走り抜ける。  庭の奥まった森との境界に近い位置に彼のお気に入りはあった。  庭の中で最も大きな古木。捻じれるような動きを見せるどっしりとした太い幹、大きく広げられた梢。春には美しい花を咲かせ、秋には果実を実らせる。  少年はこの大木が大好きで、危ないと止めに入る大人の目を逃れてはこっそり登っているのだった。  大木の幹には大きな洞があり、少年はその洞に宝物をしまい秘密の隠し場所にしていた。 ――幼子よ……。  不意に少年の耳に声が届く。暗く静かな声は少年の耳に焼きついた。  少年は立ち止まり秘密の場所には行かず、ゆっくりと何かに誘われるように庭を横切っていく。  普段は近づくことも無い館の脇を通り抜け、敷地の端の古ぼけた水場に辿り着いた。 ――そうだ、   こちらにおいで……   幼子よ……  言われるまま少年は古ぼけた水場に近づく。その視線の先に何を映しているのかぼうっとした様子で、フラフラと危なげな足取りを見せた。
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