第二話―喰らう村―

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「(こりゃ噂ではすまないな……)」 ぼやいた所で何も解決しない。 それが分かってるからこそキセキと共にいるのだ。 但し、たまにキセキが非協力的なのはいただけないが。 それでも、キセキでなければならないのだ。 「(俺に愛されてるなーキセキ……)」 「……?なに、ニヤニヤしてんの。気持ち悪っ」 「うっわ、酷っ!」 ……毒舌もいただけない。 キョロキョロと辺りを見渡していたフィリアちゃんが、ふと駆け出す。 駆けた先にはここの村人であろう人がいた。 気配は相変わらずだが。 それでも気づかないフィリアちゃんはぱっと明るく村人に話し掛ける。 「みんな!久し振り!!」 「お?おぉ!フィリアちゃんじゃないか!!」 「おや、ホントだ。フィリアちゃんだねぇ」 「おじさんおばさん、久し振りです」 ニコニコと笑いあいながら、懐かしい人々と軽く触れ合う。 クセのあるフィリアちゃんの髪が、彼女が跳ねることによって更に跳ねが目立つ。 「おや。お前さんたちはなんだ?」 「あー―、えーっと俺らは……」 「この人達、いい人達なの!おば様から私を匿ってくれたのよ!」 辺りが少しざわめく。 見知らぬ侵入者をどうするか、話し合っている様なのだが……。 どうも話し合っている村人達の目が、自分達を品定めしているような目で見てくるのだ。 いい感じは、勿論しない。 周りからの視線がなくなると、村人の中から一人の男がでてきた。 「あー…旅人さん、いらっしゃい。フィリアちゃんがお世話になっちまったみたいで」 「いやぁ、大したことは」 「お礼をしたいので……そうだフィリアちゃん。お母さんの所にいってあげな?心配してたよ?」 「う、うんっ」 パタパタとフィリアちゃんが走り去る。 その後ろ姿を皆で見送り、姿が見えなくなった後村人が再びみる。 「いやぁ、ようこそサグレブアまで」 「歓迎ありがとさん」 「旅人さん……よくこんなところに来ようなんて思いましたねぇ」 「ふむ。ちょっと調べものがあってさぁ」 「そうですか。そうなんですか」 村人は笑う。 仮面の様な顔で。
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