第一話―二人の旅人―

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じりじりと照りつける太陽の光。 年々暑くなっている気がしてならないぞ、この暑さでは。 しかも今俺が居るのは砂漠で、長く伸ばした栗色の髪がうっとおしくて、 「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ~~~~!!!」 脱水症状寸前だというのに、体に似合わない馬鹿でかい荷車を引いていて、その荷車の上には、 「ほらほらほら、ナツ?頑張ってよ」 「む、ちゃ、言う、なよっ………!」 ぐぎぎ、と唸りながら全身の筋肉細胞フル活動させているナツと呼ばれた青年に対し、荷車の上で似合わぬフリル付きのパラソル(持ち合わせが無くてこれしか買えなかった)を挿し、のんびりと日陰を堪能している人間は、 「ナツ遅ーい。ナツ暑ーい」 「~~~~~っ!お前はどこぞのお嬢様かーーーーー!!(怒)」 ナツがでぇい!と荷車を上に放ると、勿論上に乗っていた人間も放り出される。 わぁ、と大して驚いた様子もなく身軽な人間は空中でくるりと一回転し、器用に着地する。 うぅん、10.0満点の着地。 「むー。何するのさ、ナツ。いきなりそんな事したら、僕が怪我するでしょ?」 「知るか!キセキ、人を足に使うのもいい加減にしろ!!」 くるくると指先でパラソルを回すキセキと呼ばれた人間は、線が細く、身長が平均男児より低いため女性に間違われやすいが、キセキは正真正銘の男である。 ただしその顔は無表情。 目つきの悪い印象の与えやすいキセキの表情に対し、ナツはころころと表情がよく変わる。 全く反対の性格の二人は、いわゆる旅人といわれる種類の人間だった。
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