第一話―二人の旅人―

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「……まぁ、よく頑張ったのは褒めてあげる。うん」 「冷たくない?冷たくない?やっぱさー、それなりの報酬は欲しいぞ?」 すすす、とさりげなくキセキの腰に手を添える。 そうそう。俺はただ、ちょっとご褒美が欲しいだけさ。 あー、今なら砂漠の暑さ丸無視出来てる。 素晴らしきかな、俺のキセキに対する愛情。 キセキは微動だにしない。 驚いているのではなく、さっさとこの行為を終わらせたいだけである。 じりじりと照りつける太陽の日差し。 むせかえる様な熱い空気。 近づける顔。 んでもって、俺の背後から聞こえるガラガラという音―――ん?ガラガラ? 「あっ、馬車だ」 「ヘブッ!!」 ちょっとナツ邪魔、と小声で言った後裏拳でナツを殴るキセキ。 勿論今どき寒いがロマンチストな俺様・ナツは反応が追い付かず、横に飛ばされる。 ご、ご褒美…… シクシクと一人で泣くナツを無視し、キセキは馬車に手を振っていた。 そして馬車が止まる。 「おや、旅の方かな?初めまして」 「初めましておじさん。乗れますか?」 「あぁ、これだけ暑いから皆家に籠っちまってる。これも何かの縁さ、タダにしてやるから乗りな」 「やった、ありがとうございます。―――ほら、ナツ。いつまでも寝てないで、さっさと行くよ」 「……酷い、徹底的に酷い。キセキには優しさという物はないのか……(泣)」 「おじさん、引いてください。っていうか行きましょう」 「マジで酷くない!!?(号泣)」 俺本当に立ち直れないかも……といいながら、馬車に乗り込む。 西部劇に出てきそうな白い布で覆われている馬車は、意外と広め。 乗客は俺達入れて四人。 どこかのセレブの御婦人と、行商人が一人ずつ。 いきますよ?、というおじさんの声で馬車は再び走りだした。
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