第一話―二人の旅人―

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…………… ……… …気まずっ 御婦人はやっぱ、ほら婦人ですから、話かけたくないらしい。 行商人にいたっては寝てるし。 キセキは俺の反対側に座って、小さな窓から景色ずっと見てるし。 「(暇だなぁ……)」 俺も寝ようかな、と頭の後ろで手を組んで目を閉じた。 と同時に馬車が止まった。 数秒の間後、小さな少女が入ってきた。 旅をするには足りない装備であり、お出かけお使い程度の荷物しか持っていない。 可愛らしいワンピースに似合う、可愛らしい癖のある髪は淡いピンクの色だ。 走って来たのか、呼吸は乱れている。 そのまま俺の隣に座り、ふぅ、と大きなため息をついた。 ……暇だし、興味湧いたし。 「こんにちは」 「ハァ………?えっ、私に言ってますか?」 「うん、その通り。こんにちは」 「あっ……こ、こんにちは」 撥ねた髪が気になるのか、しきりに髪を手で解かす。 少女は小さく、小柄だった。 だから可愛い子だった。 「一人旅?」 「いえ……少し……事情があって、母に………」 「会いにいくんだ」 そう言うと、少女はコクンと頷いた。 うーん、可愛いなぁ。 「そっか。しっかりしてるなぁ……」 「え、そ、そんなこと」 「ナツ、困ってる。程々にしなさい」 「分かってます。―ねぇ、君名前は?」 「あ、フィリアです。フィリア・ルシーナ」 「名前も可愛いっ!俺はナツ、んでこっちはキセキ」 フィリアちゃんは不安だったのか、優しく話しかけてきた俺達と挨拶をしてホッとしていた。 そしてたわいもない話をする。 砂漠には素晴らしいオアシスがあるとか。 町にはどんな美味いものがあるんだとか。 宿は設備がいいとか悪いとか。 クスクスと笑うフィリアちゃんは、本当に楽しそうだった。 ふと、今まで興味もなく窓の外を見ていたキセキがフィリアちゃんを見た。
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