第一話―二人の旅人―

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じっと見てる。 その視線に気付いたフィリアちゃんは、「何か?」と首を傾げて言った。 見つめる、のではなくどっちかというと睨みつける様なキセキ。 勿論フィリアちゃんビビってます。 「お、おいキセキ。睨むなよ」 「………ねぇ、君さ……」 「?はい…」 「もしかして"ピュア"じゃない?」 "ピュア"。 俺等には、この世界には人間に属種がある。 ほとんどの人間は"ノーマル"といわれ、その名の通り"ただの"人間だ。 けれど、たまに、極稀に特別な属種が生まれる事がある。 "ピュア"はその内の一つで、何の汚れもない、たった一人の人を愛し愛された男女の間にしか生まれない。 一切の汚れを知らずに世に生まれた、という意味を込め"ピュア"と呼ばれる様になったのだ。 「えっ、マジで?へぇ、ピュアなの?」 「あっ……いや、その……」 「何もしないよ」 足を組み、頬杖をついたキセキが優しい声音(こわね)で言う。 その表情は相変わらず無表情。 けれど、これがコイツのいつもの表情だ。 だけどなぁ、キセキ…… 「もうちょいソフトになりゃあいいのによぉ……」 「何か言った?」 「いえ何も?」 ふーん、と対した興味もなさそうに答えまた窓に視線を戻すキセキ。 ……興味持ってあげて。 フィリアちゃんが可哀想でしょう。 キセキの態度に何かしらの不安を抱いたのか、フィリアはおろおろと対処に困っていた。 「フィリアちゃん。コイツはいっつもこうだから気にしなくていいよ」 「で、でも」 「人がいる」 唐突にキセキが呟いた。 その言葉通り、人がいた。 女性で歳は三十代半ばといったところか。 髪を頭のてっぺん近くにあげ、おだんごにしてまとめ上げている。 その女性がさっと手を上げ、馬車を停める。 女性は乗らずにおじさんと何か話している。 人を捜しているのだと、女性はいう。 おじさんは勿論、どんな方ですかと聞く。 女性はいう。 名をフィリアという、少女だと。
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