第一話―二人の旅人―

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「フィリア…?君じゃん?」 「叔母……様…」 叔母様? ということは――― あの女性はフィリアちゃんの叔母さん、ということだ。 あ、説明しなくても分かるって? だよねー。 「ナツ、キモイ。……フィリアだっけ?見付かったらヤバいんじゃない?」 「っ………」 キモイとは失礼な! ……ま、いいけど。 兎にも角にも何故かフィリアちゃんは叔母さんに追われてる。 そしてフィリアちゃんも叔母さんから逃げてる。 余計な首は突っ込まない方がいいんだけど、ねぇ。 そんな間にも、いいわ、私が見ます!と叔母さんが勝手に後ろに回る。 勿論おじさんは、ちょっとお客さん!と静止させるも、叔母さんは無視の一点張り。 後ろに回ったら勢い良く砂避けの布をシャッと開ける。 そして怒鳴る。 「フィリア!いるんだろ!?出てこないかい!!」 物静かな御婦人はいかにも迷惑そうな顔をし、行商人は飛び起きる。 んで、俺等は――― 知らんぷり。 フィリアちゃんの姿は、ない。 「フィリアっ!……隠れて―」 「女の子なら」 出てったよ?とキセキが喋る。 それに続けて俺も喋る。 「そうそう。さっきこっそり脱け出してたな」 「そんな筈は、」 「いないじゃん」 キセキが、冷たく言い放つ。 フィリアちゃんがこの場にいないのは見れば分かる。 諦めの悪いこの叔母さんに、キセキは痺れを切らしていた。 「あのねぇ、叔母さん。そのフィリア?って子はさ、いないの。僕等も暇じゃないの」 「そうそう。キセキの言うとーりっ、だから叔母さん」 ちょっと冷酷だけど。 ちょっと対応酷いけど。 きっぱりと、俺とキセキが口を揃えて言い切る。 「「正直、邪魔な(ウザイ)んですけど」」 「っ…!わ、悪かったわね……」 冷酷な言葉、冷たい視線にたじろいだのか、叔母さんはあっさり出ていった。 そしておじさんにすまなかったね、と言うと、叔母さんは去っていった。 おじさんが少し見送った後、馬車が再び走り出した。
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