第二話―喰らう村―

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サグレブアは世間様からはあまり記憶にない、けれど歴史上、または地図上には確かにある村だ。 そこは長閑(ノドカ)で平和な村なんだけど、最近変な噂がたっている。 ――サグレブアに行った者が帰ってこない。 只の噂で済むならよし。 しかし、火の無い所に煙は立たないというし。 もしかしたら俺達の求めているモノも無いとは限らないし。 怪しい物事は徹底的に調べている、という訳なのだ。 「しっかし、ホント長閑だねぇ」 「すみません、こんな田舎で……」 「いやいや。平和が一番さー」 サグレブアは特に変わった様子もなく、長閑な村として其処に有る。 ――前言撤回。異常だ。 村人は誰一人、村の外にいない。 まるで其処が切り取られた空間に村人が閉じ込められているかの様に。 『Welcome to Sagreba』と書かれたアーチ状の看板は、廃れていなく新品同様だ。 これも、異常。 だってこの村は―― 「わぁ……懐かしいなぁ」 「懐かしい、ってことはフィリアちゃん此処に住んでたの?」 「はい。小さい頃でしたけど」 今も充分小さいと思うけどなぁ……。 そんな事を言ったら、怒られそうだ。 …前科もあるしね、キセキ。 「何、ナツ」 「いや?何でも~?」 ギロリと睨むキセキは、それだけで人を殺せるんじゃ無いかと思ってしまう位、怖い。 キセキは目を俺から離すと、村を見る。 たとえ村から村人が出られないとしても、こんな所で立ち往生してる姿は見えている……のだと思う。 不審に思われるのは後先面倒だ。 「んー、んじゃあ入りますか?」 「はい」 「……そうだね」 キセキさーん、愛想、悪いですよー。 まぁいいか、と自己解決させ切り取られた空間に足を踏み込む。 刹那、身体が重くなった。 しかし次の瞬間には何事もなかったように身体は動く。 でも、これではっきりした。 切り取られた空間なんて、回りくどいものではない。 正しくは異空間。 この異空間には生きとし生ける者の気配が、全くない。 これがどういう事なのかは、まだ、分からない。
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