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朝方の風は冷たく、太陽の光が穏やかに降り注ぎ湖面に反射し揺れる。マナにはそれが自分の心情とは間逆に見えた。
湖に潮の香りが漂う不思議な空間を前に、マナは溜め息を吐く。ふと、上着のポケットに隠していた十字架を取り出して見つめる。
それは神官が持つ記しで、政府領域では馴染みの無い代物だ。とは言っても、神官領域のしきたり程厳重ではないようで、政府の民間人が神官側の人間を見つけても、攻撃を仕掛けては来なかった。
それが、この領域に来た当初のマナには衝撃を与えた。勿論、今でも不思議な心境でしかなく、地域が変わるだけでこうも扱いが異なるのかと困惑している。
マナの実家は、西の神官領域サージ国ラマトークにある。実家で捕まったイブの身を案じてはいたが、監獄島からでは情報を得ることができない。ましてや、神官と敵対する政府の監視下から逃げ出す術も思いつかずに流されるまま今に至る。
サージ国の首都リバームは、ラッドサンド大陸のバグトラークシティより列車で三日は掛かる。そこからマナの実家があるラマトークまで馬車で一日だ。監獄島からサージまで、計四日の旅になる。監獄島に来るときは貨物列車だったために十日を要した。よく生きて監獄島に辿り着けたと今でも思う。
マナにしてみれば、時間の経過が不安を募らせるだけであった。
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