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先に船に乗ったのはそういう理由からだった。最も、スピカはそんなマナの考えを知らないのだろう。
「一緒に行動してください。そうでなくても危険な状態なんですから」
心配そうに覗き込んでくるスピカの蒼い眼差しから逃れるようにマナは、謝り、話を逸らす。
「ごめんなさい。あの、隊長さんはどうなされたんですか」
肌寒い風が、二人の頬を撫でて通り過ぎた。
「それが、見当たらなくて」
スピカが黒の布で出来た肩掛け袋の紐を弄りながら、辺りを見渡した。
マナも甲板に一瞥くれたが、二、三人の客が会話をしているだけで目的の人物は見当たらない。
「昨日は散々でしたからね。倉庫とかに潜り込んで寝ていそうです」
焦ったように首を振るスピカの様子が面白くて、マナは唇に軽く手を当て笑う。
「きっとそうですよ。探してきますね」
「ですから、ひとりで行動するのは危険です」
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