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「あの二人には気をつけてください。敵ですから」
「島に流れた時に言っていた、隊長さんを狙っているという敵さんですか」
「え、まあ、正確にはどこかに連れていきたいようですが。それはともかく、外は寒いですから中に入りましょう」
スピカが曖昧に口を開いて、入口付近から甲板の二人に視線を向ける。
マナは、疑問に思いながらもとりあえず頷いてみせた。マナには、先程の男が悪党には見えなかったのだ。
客室までの通路を移動して、マナとスピカは問題の彼を探す。
その頃には乗客は粗方乗り込み、監獄島の入口であり出口と呼ばれる桟橋には見送り客が集まり、しばしの別れを惜しむ声が響く。
出発時刻は、目前であった。
マナの前を歩いていたスピカが荷物置き場を見つけて立ち止まり、扉を開こうとノブに手を掛ける。
「鍵、掛かってませんね。入ってみましょうか。隊長が居るかも知れません」
スピカが荷物置き場の中へ入るのを待って、悪戯するような感覚でそれに続いた。
部屋の中には、積み荷と乗客の荷物が棚と床に綺麗に並べてある。然し、その部屋に彼の姿は見当たらない。
二人で八畳程度の荷物置き場を一周し困ったように顔を見合わせた。どちらも、他に隠れられそうな場所が思いつかなかったのだ。
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