memory1

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「別の船に間違えて乗ったとは考えられませんか?」  マナの問い掛けに、スピカが、手の甲を自分の顎下に当てがう。スピカが考える時はいつもそんな態勢だった。本人は気づいていないのか、そのまま口を開く。 「マナさんも昨日の隊長を見たでしょう。あのはしゃぎようでどうして乗る船を間違えるんです」  スピカが、荷物置き場から出て、壁に付いていた時計を見上げる。マナも一瞥すれば、出発時刻は迫っていた。 「そういえば、お荷物たくさんありましたよね」 「はい、徹夜で荷造りした結果がこれです」  向き直ったスピカが、肩掛け袋を指差す。  今回、スピカと隊長と呼ばれる通称神様は、マナを敵側の神官領域であるリバームに送り届けた後、ある出張に出掛けることになっている。  残念ながら政府機密事項と言うことで、マナに対しての詳しい説明は成されていない。  とはいえ、昨日、荷造りを手伝いに行った時、事務所に彼が持ち込んだ荷物の量は、肩掛け袋七つ分で、明らかに旅慣れしていないことを暴露した。しかも、その中身の大半が政府から送られた爆弾やら毒入りの菓子だ。警備警察隊の部下が、池の魚に食べさせて発覚しのだ。  とりあえず、危険物を全て取り除いて最小限に留めたのだが、スピカがこれでも多いと付け加えて嘆息する。
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