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旅は、目的地までの旅費さえあれば後はなんとかなるものだ。それは、逃亡してきたマナも良く知っている。
「隊長さんは、初めて島を出るんですよね」
「はい。けれど、僕は今回のことに納得してないんです」
「それは、私も同じです」
マナも隊長と呼ばれる彼の船出に疑問を感じている。
「マナさんを送るだけなら誰にでもできるのに、わざわざ隊長をつけるなんて。彼が神官に友好条約なんて言葉を口にするとも思えないのに、世界を僕に賭けると言われました。何故、僕なんでしょうか?」
「そうですよね。ただでさえ、神官幹部が隊長さんを狙っているのに不用心だと思います。それに、私も隊長さんが実家を壊しそうで怖いです」
「大丈夫です。その最悪の事態だけは止めますから」
スピカが、扉を閉めようとした手を止めた。荷物置き場に視線を向け人差し指を唇に当てる。その仕草に、マナも部屋を覗いた。
荷物置き場から、秒針の音が聴こえてくる。マナは一瞬、背筋を凍らせた。微かに響く音には一度だけ遭遇している。
事務所にあった荷物に仕掛けられていた爆弾と同じ音であった。マナは、スピカが近寄るのを胸騒ぎを振り払え無いまま見守る。
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