memory1

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 スピカが、音を頼りに棚に置かれた積み荷に恐る恐ると手を伸ばしたその時、出航合図である鐘の音が三度響く。その音に、マナが小さな悲鳴を上げる。 「う、うわあっ」  連鎖的に過剰反応したスピカの手から持ち上げようとしていた積み荷が落ちる。積み荷は小さな飾り細工入りの木箱で、床に叩きつけられた衝撃で中身が飛び出した。  硬直するスピカとうずくまったマナの耳に鳩時計の間抜けな鳴き声が聞こえる。どちらともなく顔を上げた二人は笑った。未だ姿を見せない彼が狙われているという話をしていただけに、些か神経質になっていたようだ。  だが、笑っていたのも束の間。マナの背中に影が射し、荷物置き場の空気が張る。鳩時計に気を取られていたマナの首筋に、太い腕が絡みつく。  マナはどうしてよいかわからずに、スピカに目線を移した。  「おっと、動くなよ。連れに用事はねえからな」  船員服の青年が、三文台詞を吐き捨てて、マナに荷物倉庫から移動するようにと続ける。マナは、促されるまま荷物置き場から出た。  客席に向かう船員の手には、物騒な代物が見える。いつ火を吹くか知れない簡易武器はスピカを狙っている。
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