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「副隊長。スペアの眼鏡忘れてるよ?」
「ああ、すいません。貰って行きますねアスカ司令官」
スピカは、自分にあてがわれた隅の机で頬杖を付く少女にひとこと答えて事務所を飛び出した。
隊長云々も大切な話しなのだが、朝一で事件が起きていたのだ。
何でも、神官の娘がスラム街に出没。得物を握り「神様を出せ!」と凄まじい形相で叫んだとか。
住民の通報を受けて、約数時間。
他の事務所に女の保護を要請していたのだが、「女が情緒不安定なのか言動が不明瞭だ。力を借りたい」と通達が届いたのだ。
女が言う神様とはこの事務所の隊長のことだ。然し、隊長は島を逃げ回り、まるで事務所に関与しないのが日課だ。それで、部下に探させているのだが、見付からない。
隊長を連れていけばすぐに終わることなのに、それは無理な話であった。大体にして隊長と呼ばれる彼は社交性に欠ける。式典には姿を見せないし、今日もふらふらと島を歩いている。スピカは就任してから彼が仕事をしている姿を一度もみたことがなかった。また、彼は話を聞かない。いつも別行動だ。昔はそうでもなかったようだが、双子の弟が死んでからは、支離滅裂な行動をしていると周りはいう。
スピカは、西地区に設置される第三等星警備警察隊事務所へ向かう馬車に乗り込んだ。走る馬車から隊長の姿を探してスピカは嘆息する。
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