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…男はそこに黙って立っていた。
何をする訳でもなく、暗闇の中に立ち尽くす男。
暗いためにその姿はよく見えない、ただいる事だけが唯一分かる事だ。
男はどうやら少し広い部屋のような所にいるようだ。
そして神経を集中して…何かを待っているのだ。
しばらくすると、その待っていたものが…ようやく姿を現す。
―ガササッ
それは小さな何かが素早く動く音、それを聞いた男は目を見開く。
音はあちらこちらで次々と発生し、その生物が複数いる事を示す。
それらの動きを確認した後、男はゆっくりと動きだす。
男はゆっくりと左手を首の高さまで上げ、真っ直ぐに構える。
指は人差し指と中指と親指を真っ直ぐに、残りの二本は握っていて…まるで拳銃のように構えていた。
―そして、それは男に向かって飛びかかった!
「キシャャャ!」
暗闇の中に、奇怪な金切り声が木霊し、何かが男に向かって真っ直ぐに迫ってくる!
―だが男にはそれが見えていた―
本当に真っ暗で何も見えないはずなのに…男は飛びかかってくるそれに向かって構えた左手を向けていた。
そして…その音は鳴り響いた。
―バシュン!
それは男の左手の指の先端から射出された、青白い閃光。
それはまるで弾丸のように飛んでいき…そして飛びかかる何かに命中する!
命中した何かは粉々に砕け、大気中に霧散した。
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