0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
波乱
それはあるチャイムから始まった。
誰も出ないの俺が仕方なくインターホンで対応する。
「こちらに東条一馬さんはいらっしゃいますか?」
若い女性の声。
俺に何の用だ?
「俺ですけど何か?」
「お兄ちゃん!」
俺がのんきに答えるとかえってきた言葉に絶句する。
お兄ちゃん?
俺に妹はいないはずだが。
まさか、親父の悪い癖からきたのか?
頭がぐるぐるする。
「ずっと探してたんです。両親が亡くなったあと遺言で私には血の繋がらない兄がいるとあったんです。母の字で以前自分の息子を当時結婚していた方と暮らしているから、自分になにかあったらその人と兄を頼りなさいと…」
「意味が分からないんだけど」
俺は強引に会話をさえぎった。
「私は父の連れ子なので…」
その子もうまく説明出来ない様子。
待てよ、俺の母は再婚したんだったな。
娘ができたとか便りが昔きたような…。
おぼろ気な記憶が蘇る。
「俺のお袋の再婚相手の連れ子?」
おそるおそる尋ねた。
「はい」
げ。
妹と言うか俺にとっては他人じゃん。
「他に頼る人も行くところもなくて…」
「一方的に言われても」
インターフォンごしにいつまでもやりとりしていたら、いつのまにか兄弟が近寄ってきていて聞耳をたてていた。
「って、お前ら何やってんだよ」
「好奇心で」
「俺は親父に電話入れてみるわ」
と、様々な反応。
俺は他人事じゃないんだと怒鳴りたい。
「ちょっと待て。俺のお袋は死んだのか」
「はい、先週交通事故で、父と一緒に」
女の子の泣く声がした。
そうか、最近両親が亡くなったばっかりなんだ。
同情心がわいてきた。
「お兄さんの存在を遺言で知るまで分からなかったので伝えることができずすみません」
「謝らなくていいけど」
五歳までしか一緒に暮らさなかったお袋のことを思い出そうとした。
薄ぼんやりいつめ笑っていたことを思い出す。
「あなたのお父さんが仕事でなかなか家に帰らず寂しさからお兄さんを置いていってしまったことを後悔していると書いてありました」
そうだったのか。
知らなかった。
気が付いたら母は二度と帰ってこなかったから。
寂しがり屋だったのかもしない。
そんなシリアスなことを考えていたら後ろから声がした。
「妙子さんの連れ子なら面倒みるから一緒に住めだってさ」
なんですと?
いきなり現実に帰る。
「お前らいいのかよ!」
最初のコメントを投稿しよう!