第一章 俺はヤクザが嫌いだ!

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俺はヤクザが嫌いだ! 俺はヤクザが大嫌いだ!! ある年の初秋の夕暮れに事件は起こった。 その日は、朝からどんよりしたイヤな天気だった。鉛色の雲が天を覆い、薄雲の隙間からときおり覗く太陽が鈍い光を放っていた。 スプリングがへたった使いふるしたソファーに寝転びながらダラダラとテレビを見てると、今売り出し中の若手芸人が、たいして旨いとも思えないイタリア料理を大袈裟なリアクションで褒め称えていた。 見てて恥ずかしくなるほどのやらせ番組、俺は思わずテレビを消した。 ふとテレビ台の下に目線を移すとTSUTAYAのビデオが目に入った。 『ヤバイな、すっかり忘れてた。』今日中に返さないと延滞になる。 急いでクローゼットの中から買ったばかりの白いパーカーを取り出す。 黒いTシヤッの上から袖を通すと、お気に入りの紺の傘を持って急ぎ宇和島のTSUTAYAへと車を走らせた。
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