第一章 俺はヤクザが嫌いだ!

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ビデオ屋の駐車場は入り組んだ街中にある。  ビルとビルとの狭間にある猫の額ほどの駐車場。 スペースが極端に狭いため、切り返しの苦手な俺は斜め向かいにある本屋のだだっ広い駐車場に車を停めた。 小雨がパラパラとボンネットを叩く。 これぐらいの雨なら傘は要らない。 パーカーのフードを被ると行き交う車をぬうように車道を横切り、TSUTAYAに入った。 この店の入り口は道路より一段下がった位置にあり鴨居が極端に低いためいつも頭をぶつけそうになる。 カウンターの中にいた中学生に見間違える幼顔の女の子に『あ、これ』と照れながら声をかけビデオを返すと、棚にあるビデオをぶらぶら見て廻った。 奥に進むにつれてすえたヘドロの臭いが鼻をつく。裏にどぶ川が流れているのだ。 10分ほどしてTSUTAYAを出ると、雨は止んでいた。 雨に濡れたアスフアルトが黒く光っている。 別に急ぐ用事もない俺は、退屈しのぎに本屋へ入った。
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