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数ヶ月前だった。
別れたんだ…彼と。
「別れよう」
その一言の後、間髪いれずに電話は切られた。
そのあとすぐ何度も電話をしたのだ。でも、彼が出てくれる事はなかった。
すぐにでも会いに行きたかった。けれど、遠い場所に居る彼はきっと迎えに来てはくれないだろう。
辛かった。
あまりにも突然で、一方的な別れ方だった。
私はもう、受話器を取る気にもなれなかった。
その日の夜遅く、私は外の空気を吸いたくなって、外に出ようと思った。そういえば、今日は一歩も外に出ていなかった。
そこら辺に掛けてある上着を羽織って玄関のドアを開けると、つんと冷たい風が頬をきって、玄関に入り込んできた。
キティーちゃんサンダルを履いて外に出た。
頭はなんだかぼーっとして、結構寒くて、鳥肌がぼっとたったけれど、そんなのも無視して、ただまっすぐ歩いた。
猫の声がする。
私の耳に気のせいかと思う位、小さな小さな猫の鳴き声が聞こえた。
まわりは田んぼと畑にビニールハウス、視界にはぽつんぽつんと街灯があるだけの、暗い闇を探す。
私の背丈よりも大きな木の下にいたそれは雑種のようで、白と茶色の二毛だった。
目は大きく見開いて、私を見つめていた。まだちいさいその猫は、寒そうに震えていた。親猫も仲間もいなくて、そいつ一匹だけ。
私はいつの間にか子猫を抱きかかえて、自分の家の前まで来てしまっていた。
ドアに手をかけると、鍵を閉め忘れていた事に気が付いた。
足早に部屋に行き、持ってきたタオルに包んでやった。
よく見ると、そいつはオスだった。
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