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どれぐらい経っただろうか。
彼は幾分大きくなって、もう家族のようだった。
よく晴れた日だ。
私は朝から、彼と別れた日を思い出していた。
考える内に悲しみも怒りも、やわらかい風船のように膨らんでいった。
私は自分を止められなくなっていた。
いつの間にか、外は暗くなっていた。今まで自分が何をしていたかも分からず、左手には薬瓶が握られている。
頬には冷たくなった涙のあとがあった。右手で拭うと、手の甲についた滴が、光に反射して光っていた。
窓からは月が見え、私のお腹の上には気持ち良さそうに、わが物顔で座る彼が居た。
彼がゴロゴロと喉を鳴らす。
静かな音がお腹を伝わって響いてくる。
私の傍にはちいさな家族が居て、空からはきらきらと光る月が見守っていてくれていた。
次第に眠気の波が襲ってきて、私は静かに目を閉じた。
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