まだまだ甘い春の兆し

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「相変わらず元生徒会長さんは過保護だね。連絡、だってさ。」 灯嘉の言葉の端々には刺が付いているような気がしてならない。 そんな灯嘉に俺はただ苦笑するばかり。 よっぽど嫌いなんだな。 「そろそろ俺たちも行かないと間に合わないな。」 「俺は灯嘉ちゃんさえ一緒ならいいんだけど。」 俺にだけは明らかに違う態度に治まっていた苛立ちが再び湧き出てきそうになる。 そんな自分に『もうガキじゃないんだから』と言い聞かせてぐっと堪えた。 「柊 利津、早くついてこい。本当に置いていくぞ。」 「フルネームで呼ぶな!」 それより忘れていたことを思い出してじっと目の前にいる男を見据えると、隣にいる灯嘉が不思議そうに首を傾けた。 「おまえの名前。俺知らないんだけど。」 誰一人としてこいつの名前を呼ばずにいなくなってしまい、聞くに聞けなかった。 たとえ嫌いな、大嫌いな相手でも名前を呼ばないのは失礼だと小さい頃から教えられてきた俺は、もちろん本人に確認はしたくないが、こいつにしか聞く相手がいない。 灯嘉に聞いたって、 「利津の記憶に残す価値のないやつだから知らなくていいんだよ。」 って言われるのがわかりきってるし。 驚いた様子で目を見開いた目の前の男は、俺の顔をみて盛大にため息を吐いた。
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