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無事に生徒会引き継ぎを終えて寮に戻る頃にはいつも外出禁止が発動する数分前…
ここのところ殆んど顔を合わせる回数が減ってしまった恋人を思い浮べて盛大にため息を吐いた乃亜は、自分の部屋へと入るためゆっくりとドアノブを下ろした。
「ただいま」
返ってくるはずのない返事を待たず、制服のネクタイを緩めリビングへと足を進めるつもりだった。
奥から人の気配と同時に僅かに聞こえる物音。
一瞬、嫌な予感が過り軽く身震いした。
いくら若くて体力の有り余った高校生でも犯罪者と対面なんてなったら咄嗟の行動がとれなくなる。
頭の中は最悪の出来事を想定して膨れ上がっていった。
すべての思考が別へと向けられているうちに近づく足音。
前へも後ろへも行けないまま立ち尽くしていると、奥からひょこっと顔を出した恋人に安堵すると同時に今までの無駄な考えに赤面しそうなくらいに恥ずかしく思えた。
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