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つもりだった。
「おい、何するつもりなんだよ。帰ってきて早々に盛るな馬鹿。」
わけのわからないうちに強引に引き込まれた腕の中で顔を上げれば近づいてくる乃亜の顔。紫の瞳は閉じられていたってことは、
つまり、えっと。
「何ってキスしたかったのよ。」
何を今更とでも言いたげで、さも当たり前のようにさらっと言う俺の恋人、乃亜は髪へと口付けを落とした。
「待っててくれたの?」
「もう少し遅かったら帰ってた。」
正式に乃亜と付き合うことが決まったとき、狭霧先輩から乃亜の部屋の鍵をもらった。
これから会える時間も、傍にいれる時間も減ってしまう、寂しくなったときはこの鍵を使ってお互いの部屋でいない恋人の匂いに包まれて少しでも心が満たされるように…って。
これはあの乃亜が狭霧先輩から伝言と称して鍵を渡されたときに聞いたけど、お察しの通り『あの乃亜』のことだからとんでもないくらいに美化して話してるだけだと思う。第一、狭霧先輩はそんな優しいことは絶対に言わない!
忙しい乃亜が俺の部屋に来るのは今では皆無だ。
いつも俺が乃亜の部屋に入り浸ってる。会えば過度のスキンシップをとるだけに1人になったときの喪失感は大きい。
いつからこんなに依存してしまっているのだろう。
考えただけで恥ずかしくなってきた…
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